飲み干さないと置けない「可杯(べくはい)」という盃にインスピレーションを受け、デザインされた「酔独楽」。独楽のような盃というユニークな発想はどこから生まれたのか、デザインに込めた思いをアートディレクターの植原亮輔(KIGI)にきいてみました。

 


 

−−酔独楽をつくろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

「ずっと前から温めていた企画だったんです。可杯を作りたいなと思っていました」

※ 可杯(べくはい)とは
飲み干さないとテーブルに置けない盃。杯の底が円錐状に尖っている物の他、穴が空いていて、そのままではお酒がこぼれてしまう形のものなどがある。古くは宴席のお座敷遊びとして使われていたものが広まったと言われている。

−−以前から可杯を知っていたんですね。実際に使った経験もあるんですか?

「たしか天狗の形をした可杯で飲んだことがあります。面白いなと思ったんです。すごく日本人らしいというか、粋な遊びという感じで」

−−相手から注がれたお酒はすべて飲み干すというところが、おもてなしを大事にしている日本人らしさがありますよね。

「D-BROSのGINZA SIXのお店のテーマとも合うし、『可杯』そのものが面白いものなので、なにかやりたいなと。もともとお酒が好きなので、お酒にまつわるプロダクトをつくりたいという思いもありました」

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−−酔独楽のデザインはどのように考えていったのでしょうか。

「枡ってあるじゃないですか?」

−−お米とかはかったりする枡ですか?

「そう。あれはもともと液体や穀物などの量を計るための容器なんですが、枡は一つの単位でもあり、これ以上ないってくらい綺麗な四角形をしているんですよね。そぎ落とされた美しい形。そこには日本人のミニマルな感覚、コンセプシャルな思考が詰まっていると思うんです。それがすごく好きなんです。なので、酔独楽の盃もそのような考え方を大事にしたデザインを目指しました。本来ならば盃には高台がついているわけだけど、それさえも取ってしまうという」

−−なるほど、確かに無駄な要素がひとつもない形ですよね。酔独楽は独楽をモチーフにしているところも特徴のひとつだと思うのですが、盃と独楽というアイデアはどこで繋がったんですか?

「もともと可杯というものを知っていたので、この発想があったのかもしれないけど『酔が回れば独楽も回る』というフレーズがパッと思い浮かんだんです。盃が独楽みたいに回っていたら面白いなぁって。盃が回って、それを見ながら飲んでる人の頭の中もぐるぐると回っていく姿を想像して、これは面白い!と」

−−ダジャレだったんですか(笑)それで盃と独楽が結びついたと。

「そう、ダジャレで思いついたんです。盃がくるくる回ってるっていうのは、それ自体コミカルで、ポップで、キャッチー。それが商品としても面白みがあるなと思ったわけです」

−−理想の形はその時点で大体イメージができていたんですね。

「そうですね、ある程度は。あとはデザイナーの遠藤の感覚も取り入れながら一緒に盃の角度とか形を作っていきました。角度がゆるくて、あまりにも平べったいとお酒がこぼれてしまうので、道具としての最低限の機能は保ちたいと考えていました。一番大きい盃は実際飲んでみると多少こぼれたりもするんですが、ギリギリのところがこの商品の面白いところ。こぼれないようにそっと飲むんです。緊張感があるというか、自分で実際体験してみてそれがすごく面白いなと思いました」

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−−何気なく飲むというよりは、いつもとは違う面持ちで飲む盃ですよね。

「日本酒の味や香りだけでなく、お酒を飲むという行為までも楽しむ。それ自体がひとつの文化となって、海外の人にも面白いなって思ってもらえたらいいなと思いますね」

−−「お酒を飲む行為を楽しむ」っていいですね。

「日本独特な感覚だなって思うんです。粋というか」

−−なるほど。今回デザインする上で難しかった点はありますか?

「今まで和なものってそんなにデザインしてこなかったから。和をイメージしたフラワーベースとかは作ってきたけどデザイン方法としてはシンプルなので、和だからと言って和室じゃないと合わないようなものではなく、どんなテイストにも合わせられるデザインでした。でもこれはまさに日本酒を飲むためのデザイン」

−−和というものを意識したとき、いつもと違うデザインの仕方になるのでしょうか。

「自分が日本人なんだということは、やはりすごく意識してデザインしたと思います。例えば、今回は酔独楽の盃と同時に、大地の芸術祭に「スタンディング酒BAR・酔独楽」を出店して、さらに地元の酒蔵と一緒に「清酒・酔独楽」まで作ったんですが、プロダクトのデザインに終わらず、酔独楽のブランドデザインについて考えていかなくてはならなかった。そしていかに自分は日本人であるということ、現代的なものを作ってるんだっていうことを検証する感覚が重要でした」

−−具体的に言うとどんなことでしょうか。

「ちょっとおしゃれにデザインしようと思ったら全部英語でワインボトルっぽい日本酒とかあるじゃないですか。そういうやり方とかもあるかなとか色々試したりしたんだけど、なんか嘘くさいなと思って、これはもう書字しかないなと思ったんです。「酔独楽」の文字は上手く書くとダメで、下手に書くしかなくて、あれは酔っ払った字なんです」

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−−酔拳的な感じですよね(笑)

「お酒を飲んで書いたわけじゃないんですけど、右手で何回書いても、やっぱりなにか違うなと思って、左手で書いてみたら、それがとてもよかったんですよね。これほぼ一発で採用となりました」

−−自分の中の日本的感覚と向き合うのが大変だったという感じですか?

「そうなんです。いわゆる日本っぽいとか、お酒っぽいデザインではなく、なにかどっか変さと今っぽさと日本らしさとバランスを保って、そこら辺の微妙にデザインする感覚が難しかったですね。盃の色の選択もそのひとつで、日本の伝統色から拾ってきてもダメだし、現代的な感覚が必要だと思ってカラーリングを決めました」

−−今回は実際に塗装の職人さんにも会いにいかれたとか。

「はい、どんな塗料がいいか相談しに現場を見にいかせてもらいました。山中漆器の地域では分業制になっていて、それぞれの職人さんがこうやってものを作っているんだなぁといろいろ勉強させてもらいました。実際に独楽の塗装も行っていたりする地域なので、独楽と同じ塗り方でお願いすることにしました。職人さんの仕事もすごく丁寧で、安心してお任せできると思いました」

−−ポップなカラーの組み合わせが独楽を連想させますね。

「最初は漆がいいかなと思っていたのですが、漆だとイメージしていた鮮やかな発色がでないということだったので、ウレタン塗料を選択しました」

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−−とてもきれいですね。

「色のことでいうと、宮田さんが全部金のセットを作りたいと言った時は正直どうかなぁと思っていました。一部に金を使うのはいいけど、全部金というのはどうなんだろうと。でも、実際に使ってみると、金が意外といいんですよね。放射線状に光が伸びるから回っている様子が面白いんです。スピードが落ちるとキラキラと光ったり、それがすごく効いていて、金があることで高級感も出てくるのでデザイン全体のレベルが上がって見えてくる。回ってる感じとかよくないですか?」

−−ほんとだ、キラキラしてますね。

>>酔独楽が回っている様子はこちら

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−−では、最後の質問です。今回の酔独楽のものづくりを通して、新しい気づきみたいなものはありましたでしょうか?

「大地の芸術祭に参加することになったからこそ考えられたことですが、お店を作る、飲み方を考える、日本酒を作る、またどうやってそのお酒を売って利益に還元していくかだったり、ひとつのプロダクトからいろいろな方向に発展していきました。それがすごく面白かったです。お酒の方から広がって酔独楽の盃を知ることがあるかもしれないし、盃の方から広がってお酒を知ることもあるかもしれない。そういう効相効果で文化がつながっていけばいいなと思っています」

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−−盃とお酒とスタンディング酒BAR・酔独楽の3つの柱でいろんな方向に広がっていけそうですよね。

「スタンディング酒BAR・酔独楽は、大地の芸術祭に出品するということもあり、アート作品として作りました。サービスとかブランドとかショップという考え方で、ひとつにまとまっているものというのがデザインの仕事をしている僕らからの新しい提案だと思っています。盃やお酒も作って、サービスを考え、空間のデザインもし、世の中に広めていく宣伝までも作り上げていく作品です」

−−トータル的なデザインですね。

「今後はポップアップショップとして広がっていくとか、ゆくゆくは実際にお店ができたりして、より深く社会に浸透していけたら面白いなと思っています」

−−スタンディング酒BAR・ 酔独楽のポップアップショップたのしそうですね。

「実は10月6日から銀座の東急プラザ1階の高級セレクトショップ「ストラスブルゴ」で、KIGIが日本酒をテーマに展示をするんです。KIKOFの日本酒セットや、酔独楽を展示して、1日限りのポップアップバー(10月13日土曜日)も展開しようと思っています」

−−おぉ!東京でも見られるんですね。つながっていきますね。

「海外の人にも受け入れてもらえそうだし、どんどん広げていきたいなと思ってます。ぜひ間に合えば大地の芸術祭にも行って欲しいです」

−−はい。私たちスタッフもぜひ行ってきたいと思います。


現在、大地の芸術祭にて「スタンディング酒BAR・酔独楽」営業中です。9月17日までの開催となりますので、ぜひこの機会にお出かけください。

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