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2017ADC展ギャラリートーク 宮田識×KIGI トークショーレポート

7月28日2017年 PRODUCTS, 編集部ブログ

「D-BROS at GINZA SIX」が、日本の広告・デザインの最高峰ともいえる「2017年度ADC賞」にてADC会員賞を受賞しました。この受賞を記念して、7月19日ギンザ・グラフィック・ギャラリーで、宮田識、植原亮輔(KIGI)、渡邉良重(KIGI)のトークインベトが行われました。そのトークインベトの様子をお伝えします。

 

植原 まずは、ADC会員賞に関してですが、ロゴとかポスターとか環境とかいろんなジャンルがあるんですけど、「D-BROS at GINZA SIX」のプロジェクトは、その各ジャンルから評価をいただき、最後は全体が一つになったかたちで受賞させてもらいました。この3人以外にもプロジェクトに関わっている人はいっぱいいて、製作者賞を受賞したドラフトのデザイナー・福澤卓馬と飯田郁だったり。

渡邉 外部デザイナーで店舗の内装をした小川博央さん(小川建築事務所)とか。

植原 その他、職人さんとか、本当にいろいろな方々が絡んでこのプロジェクトを受賞しました。個人的には、今回受賞できたことがすごく嬉しくて。かつてD-BROSのプロダクトでADC賞を受賞したことが2回ほどあって、クラフトテープとビニールのフラワーベースで受賞したんですが、その時はADC会員賞ではなくて、一般応募のADC賞なんですね。なので、僕一人が受賞したんです。でも実際には宮田さんがいて、良重さんがいてという背景があって獲れたものだったから。なので、今回みんなで受賞できたのはすごくうれしかったです。良重さんはどうですか?

渡邉 ドラフトで私は25年間お世話になって、その途中でD-BROSができて、それからずっと宮田さんやみんなと一緒にやってきたので、みんなで受賞できたってことは本当に嬉しい。植原が言ったことと同じですけど(笑)。

植原 宮田さんはいかがでしょうか?

宮田 俺はちょっとあとで言います(笑)。

植原 ちなみに、キギは2012年にドラフトのフランチャイズシステムで独立をしました。で、独立はしたんだけど、D-BROSは継続してやるというかたちで2週間に1度くらいドラフトに行って、定期的に商品開発の打ち合わせを続けています。今回のプロジェクトでは本当に頻繁にドラフトに行っては、ディレクションをしたり、デザインのアドバイスをしたり、いろいろなことをしてきました。

渡邉 そうですね。

植原 商品については、既存の商品をGINZA SIXバーションにしたもの、例えばフラワーベースとか。あとは新しい商品開発をしたという2つの方向性があります。新しい商品開発の中で一番のメインは家紋の仕事ですね。家紋を使った本や風呂敷、扇子などを作りました。あとは伝統工芸の職人さんたちと一緒に何かを作るということで弁当箱とか、あとは漆の文庫箱とか、お箸を作りました。ということで、ざっくり説明したんですけど。

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宮田 じゃあ、僕の方から詳しく言うと(笑)。

植原 お願いします(笑)。

宮田 2年前くらいにGINZA SIXから参加できるかという話をもらって、そこから場所はどこかとか、お金はいくらかかるんだとか、いろいろと確認を重ねてきました。僕としては小さなデザイン会社がそんなお金があるわけでもないし、これから開発しなきゃいけないから、とてもそんな余裕があると思えなかった。でも、すごく考えて「まあ、やってみるか」と思ったわけです。その前から、D-BROSとしてこのまま中途半端にモノを作っててもだめだという感覚があって、ドラフトのデザイナーといろんなものを見てみたんです。地方に行ったり、伝統的なものを見てみたり。そんな中でGINZA SIXの話があり、グラフィックデザイナーとしてスタートした自分だから、日本のグラフィックデザインの原点とも言える家紋をちゃんと整理しようと、ひとつ「家紋」と決めたんです。でも、すごい大変だったよね?

植原 はい。

宮田 現存する約2万点の中から350点を選んで、それをデザイナーたちがフリーハンドで描き起こしました。機械を使って描き起こすのは簡単かもしれないけど、昔の人は機械を使ってなかったわけだから、私たちも手で描こうと決めたわけです。わからないものは一個一個調べて、家紋協会に相談しながら、まず家紋を描こうと思いました。でも、家紋だけ描いていてもしょうがないから、工芸品として何か作れないかなと思って、本にしようと思ったんです。そのために、どんな装丁にしようかとか、どんな紙が必要なのか、綴じ方まで含めてそれらを伝統工芸で作ろうと思いました。結果的には福井県の越前和紙で作ってもらいました。本当は印刷も墨で刷りたくて散々研究してもらったんだけど、印刷機械が壊れると言われてできなかった。紙は千年以上持つから大丈夫、装丁も康煕綴じというのにして長持ちする、問題は印刷で、できれば墨でやりたかった。まあ、結局普通の印刷しか方法がなくて、そうなったんですが、印刷屋さんからすると、それでも今の技術は素晴らしいから長持ちするみたいです。

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kamon_book▲福井の越前和紙、京都の職人さんに康煕綴じで装丁してもらった家紋本特装版

同時進行で、他にわっぱのお弁当箱を作りたいとデザイナーたちが言うのでわっぱを探してみたんです。それで、秋田や山形のいろんな人たちと話したんだけど、できることがすごく限られていて、われわれのグラフィックがどこにも活用できずに、伝統工芸だけで終わっちゃうんじゃないかと思った。それでグラフィックも活かせる新潟のへら絞りという技術にたどり着きました。でも、なかなか売れないですね(笑)。

obento_a▲へら絞りの技術を利用した銅製のお弁当箱

植原 あはは。

宮田 デザイナーはやっぱりカッコつけ過ぎちゃってダメなんです。構造がわからないくらい削ぎ落としたデザインにしたんですけど、ふつうの人が見たら何が何だかわからない。このままじゃ職人さんに申し訳ないので、今後はこれを利用して違うものを作っていきたいなと思ってるんですけど。

植原 これ錆びない加工をしてるんですよね。

宮田 もちろん。

渡邉 お弁当箱にはちょっと立派過ぎて、私だったらジュエリーボックスにするかな。

宮田 このお弁当箱は一個一個手作りで、職人さんに支払うお金を考えないといけない。伝統技術を残すということは、彼らを食べさせるということを意味しているので、価格も高くなる。それを安くすることはできると思うけど、それは職人さんの技術を値切っていることになってしまうのでやらなかった。それが一個一個価格が高くなっている理由です。

フラワーベースは、D-BROSとしては大ヒット商品で、今回はこれを日本的なデザインで作るということをしました。お題としては、金銀を使うことと、江戸小紋を使うこと。それをどうやってデザイン化するか。このビニールに金を施すっていうのはすごく難しいことで、アルミ蒸着を使ってこの色を出してます。既存のフラワーベースと風情が違うのは印刷の方法が今までとは違ってかなり凝ってるからなんです。

flowervace_817▲和をテーマにした新作のフラワーベース

植原 今回フラワーベースを「和で作りたい」というのを宮田さんから言われて結構大変でしたよね?

渡邉 いろいろやりましたね。

植原 簡単そうに見えるんですが、今までで一番大変でした。和をテーマにしたデザインがこんなにも難しいというのがわかったというか、僕らはあまり和テイストのものを作ってこなかったのですごく勉強になりましたね。
話は変わりますが、良重さんは今回の新商品の中に良重さんのイラストがないじゃないですか。どんな風にこのプロジェクトに関わったんですか? みんなどうしたんだろうって思ってると思うんですよね。

渡邉 そうですよね。私はイラストを描くことが多いんですけど、それだけではなくて(笑)。今回は、定期的な打ち合わせの中で、ジャッジをするとか、アドバイスをするとか、いわゆるアートディレクター的な仕事をしていました。

植原 良重さん結構厳しいですよね。

渡邉 そうですね。ドラフトのデザイナーはがんばるのでダメなものはダメとはっきり言います。そう言うと必ずその次には、それ以上のものができてくるので。このプロジェクトが始まった時は正直ちゃんとかたちになるのかなと思ったくらい、全然ダメでダメ出しを続けた時期もあったんですけど、だんだん成長するというか、デザイナーたちが自信を持ってプレゼンをしてくれるのをこの2年間で見ることができて、先輩としてうれしく思って見ていました。そういう若者たちの成長を見つつ、商品ができる過程を見つつ、ジャッジをするという役目をしていました。

植原 良重さんは家紋のチョイスでかなり燃えてましたよね? 2万点の中から350個選ぶとき。

渡邉 家紋はもともと気になっているものだったんです。ドラフトって毎年年初めに「合宿」と言われるものがあるんですね。ある年はそれぞれが研究したものを発表したり、ある年はひたすら山歩きをしたり、年始にみんなで何かをするという行事なんですけど。それで、二人一組で何かを発表しないといけない年があって、その時私は家紋を選んだんですけど、宮田さん覚えてますか?

宮田 覚えてない(笑)。

渡邉 私の中で家紋は前から気になっていたんです。本当に好きな家紋がたくさんあったので、今回約2万点あると言われている中からどうしてもいいものを選びたくて。

植原 家紋を見てると日本人でよかったという気持ちになりますよね。

渡邉 よくこれだけのデザインを作ってきたもんだなと、私も日本人として誇らしいというか、そんな気持ちになります。

植原 商品になった家紋とは別に、D-BROSの家紋も作ったんですよ。これは僕がデザインして、それを元にD-BROSチームがパッケージとかショッパーとかに展開していったんですけど。

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渡邉 これわかりますかね?

植原 ちょっと説明しますか。D-BROSの「D」と「B」を表していて。丸い形が折りたたまれて「D」、四角い形を折りたたむ途中の「B」で、本当にシンプルでミニマルな、丸と四角で「D」と「B」をデザインしました。

宮田 僕は20代の後半からブランディングという仕事をしていて、そのためにお店の経営も知らないといけないし、ものづくりも知らないといけない。そういうことが分かってないと企業に言えないじゃないですか。やっぱり口だけじゃなくて、やってみて気がつかないと仕事にならないなと思ってこのD-BROSをやってるんですね。でも実際は、相当苦労してて、D-BROSがなかったらずっと楽だったんじゃないかと思うくらい実は大変な仕事ですね。ただ、一人ひとりのデザイナーが育ってくれていることは確かで、キギの二人を見てもデザイナーとして異常なほど成績が良くて、まあ特Aですよね。それくらいまで成長したのを見ると、D-BROSをやってよかったのかなと思います。

渡邉 グラフィックとプロダクトって近いようで全然違っていて、私も植原もD-BROSでプロダクト作りに関わることができたというのがすごくよかった。D-BROSがなくて、グラフィックの仕事だけをしていたとしたら、今の私たちは全然違うかたちになっていたと思うので、本当にそれは感謝しています。宮田さんは作りたくて作ったD-BROSだけど、私たちはタイミング良くその場にいることができてラッキーだったなと思います。

植原 では、時間になりましたので。今日はこのあとせっかくこんなにGINZA SIXが近いのでお店に移動して、実際に見てもらいたいなと思っています。

このあと、トークインベトに参加してくれた皆さんとGINZA SIX 4FのD-BROSに移動し、家紋の本やお弁当箱など実物を見ました。どれも思いの詰まったプロダクトなので、話し始めると止まらず閉店時間までとても盛り上がりました。

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そして最後には、全ページ越前和紙で作られている桐箱に入った「家紋本特装版」(¥500,000円)も出現し、2年間の月日をかけて出来上がった「D-BROS at GINZA SIX」プロジェクトの思いそのものを皆さんに見ていただきました。

D-BROS at GINZA SIXでは、今後もグラフィックデザイナーの視点から制作した伝統工芸品を提案しています。ご期待ください。

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※「ADC賞」とは、毎年5月に行われる東京アートディレクターズクラブが主催する賞で、ポスター、新聞、雑誌、テレビコマーシャルなど多様なジャンルの作品の中から、優れた作品が顕彰される賞のこと。今回選考の対象となったのは、2016年5月から2017年4月までに日本国内で発表された作品で、約8,000点の応募作品。その中からADCグランプリ1作品、ADC賞9作品、ADC会員賞3作品、ADC制作者賞2名、原弘賞1作品が選出されました。

 

▼ADC会員賞を受賞した「D-BROS at GINZA SIX」の商品はGINZA SIX店のほかD-BROS WEB STOREにてお買い求めいただけます。
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About the Author

Lee Chi-na

李 珍亞(り ちな)。1982年東京生まれ。法政大学人間環境学科卒業。株式会社スイッチ・パブリッシングを経て2014年ドラフト入社。D-BROS事業部担当。D-BROS Magazine 編集長。