D-BROSの定番「タイプフェイスカレンダー」は書体そのものの美しさや特性を活かしたシンプルなカレンダーシリーズです。2007年の発表から、その年毎にひとつずつテーマとなる書体選んできました。そして、10年目を迎える2017年版は、オールド・ローマンの代名詞とも言われるセリフ体の「Garamond(ギャラモン)」を選びました。今回より新たに担当となったデザイナー岩永和也のインタビューをお届けします。

 

進化した2017年版タイプフェイスカレンダー

−−岩永さんはD-BROSのデザイナーとしてドラフトに入られたんですよね?

そうです。2007年からアルバイトでお世話になって、2008年にD-BROSのデザイナーとして入社しました。

−−今までD-BROSのカレンダーには関わっていましたか?

ずっと良重さん(キギ)のカレンダーや、タイプフェイスカレンダーを手伝っていました。毎年関わってはいたんですが、ひとりですべてデザインするのは今回が初めてです。あとは、4年前からクリエイターズダイアリーの担当になったので、そっちをずっとやっていましたね。

−−今年はカレンダーも増えて大変でしたね。

一気に増えましたね(笑)

−−2015年版よりタイプフェイスカレンダーは壁掛け、ポスター、卓上と3タイプになりましたが、それぞれデザインするポイントは違うのでしょうか?

そうですね、違いますね。ポスターと壁掛けは近い考え方なんですが、仕様がそれぞれ違うので、紙選びやインクの色などはそれぞれ考えました。

−−岩永さんが担当になってこだわった点はありますか?

大きな変更点としては壁かけカレンダーの紙を変えました。「メヌエット」という書籍用紙でノートとかに使われる紙なんですけど、予定を書き込んだりすると思うので、裏写りせず書きやすい紙を選んでいます。あとは右上に追加した次の月のマンスリーですかね。

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−−これは2017年から新しく追加したポイントですよね。

そうですね。カレンダーとしての機能はよくなったと思うのですが、デザイン的にはここを入れることによって今までと大きくバランスが変わるので、全体のバランスが美しくみえるようにすごく気をつけました。

 

見えない部分をデザインする

−−その他にデザインする上で気をつけた点はありますか?

タイプフェイスカレンダーには昔からのルールみたいなものがあって、セリフ(文字のストロークの端にある小さな飾り=セリフを持つ書体)とサンセリフ(セリフを持たない書体)を1年ごとに交互に出しているんです。2017年版はセリフ体を選んだので、印象として細いじゃないですか。どうしても小さく見えがちなので、実は少しだけ数字の玉を大きくしてるんです。 type_1 左:セリフ体「Garamond(ギャラモン)」/ 右:サンセリフ体「“Akzidenz-Grotesk” (アクチデンツ-グロテスク)」

 

−−そうだったんですね。気づきませんでした。

華奢な印象にはなりますが、遠くからでも見やすいように心がけました。あとは書体にこだわったカレンダーなので、文字組についてもものすごく気をつけています。 typeface_img_03

−−文字組?

文字と文字の間隔のことです。例えば、数字の「1」と「3」だと文字の幅が全然違うじゃないですか?同じ間隔にしてしまうと全体のバランスが悪く見えちゃうので、文字間とか空間の取り方など、そこの調整を繊細にやっています。

−−ただ数字を打ってるだけじゃないんですね?

そうです、そうです。一個一個バランスをみながら整えてます。だから正確に測ると均等ではないんです。ただ見たときのバランスで均等に見えるように組んでやっています。

−−12ヵ月分全部ってことですよね?それってすごい大変な作業ですね。

地味な作業をひたすらやり続ける感じです(笑)

−−結構細かい作業があるんですね。シンプルなので簡単かと思ってました。すみません(笑)

やることなさそうに見えるけど、実は結構あるんですよね(笑)デザインという目立つデザインはそんなにないかもしれませんが、見えないところのデザインをしているというか、シンプルなデザインだからこそ、そういうところをきちんとやっていないと逆に目立ってきてしまうので、細かいところまで気を配らないといけないんです。

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2017年の書体は「Garamond (ギャラモン)」

−−書体についてはどういう基準で選んでいるんですか?

メジャーどころはもうすでにやってきているんですけど。

−−そうですね、2008年の「Bodoni」に始まり、タイプフェイスももう10年になりますから。

そういう意味では「ギャラモン」も今までなんで選ばれなかったのか不思議なくらいメジャーな書体なんです。打ち合わせでも、あれ?これ前にやらなかったっけという話題にもなったくらい。選ぶ基準としては、書体として歴史がちゃんとあること、いろんなところで広く使われていることですかね。

−−マイナーな書体というよりは昔から愛されてきている王道の書体から選んでいるんですね。

はい。あと、もうひとつは、書体には派生というのがたくさんあって、どんどん出てきてるんです。例えば「Helvecica」に影響を受けた書体、「Century」に影響を受けた書体というような。その派生の大本、根源に近い書体をなるべく選ぶようにしています。いろんな書体が影響を受けているベースとなる、基礎ともいえる書体です。

>>今までのタイプフェイスカレンダーについてはこちらでご紹介しています。
「TYPEFACE CALENDAR」飽くなきデザインへの探究心 type_4

デザインする上で書体ってどんな役割?

−−デザインする上で書体って重要な要素のひとつだと思うんですけど、デザイナーにとって、書体とはどんなものですか?

なんだろうな。例えば、最初に上に着る服を決めてたとして、それが青だとするじゃないですか。それに合わせるズボンくらい需要なものですね。

−−それは結構重要ですね。私はてっきりアクセント的な時計くらいなのかなと思ってました。

あはは(笑)結構需要だと思いますよ。それによって印象も全然変わってくると思います。

−−書体はいつもどういう観点で選んでるんですか?

うーん、すごい難しいなぁ。感覚なんですけど、なんとなく書体が持っている世界観みたいなものがそれぞれにあると思うんです。それを何か新しく作る時は思い浮かべて、この書体合いそうだなって思って選んだりしています。

−−デザインしていく中で決まってくるってことですか?

そうですね。こういう世界にしたいんだったら、あれが合うかなとか。そういう感覚ですかね。

−−へぇー!じゃあ、デザイナーはたくさんの書体を知ってるんですか?

知っている人の方が強いとは思いますけどね。

−−ちなみに岩永さんはどうしてるんですか?書体について勉強したりするんですか?

勉強しますよ。例えばどっかでみた書体で、これきれいだなっていうのがあると、これどんな書体なんだろうなと思って調べたりします。

−−じゃあ、街中歩いたりしてても目に入ってきたりするんですか?

目につきますね。気になるのは気になります。

−−職業病ですね(笑)

完全なる職業病だと思います(笑)オリジナルで作られた書体でも、ベースになっているのはこれかなというのがなんとなくわかってくるので。

−−へぇー。岩永さんのフォントストックはわりと街中にあるということすね。

街中とあと「モンセン」をよく見てますね。

−−モンセン?

ドラフトに10冊くらいあるんですけど。書体がたくさん載っている書体見本帳です。ちなみに、同じ名前の書体でも、macで出てくる「ギャラモン」とモンセンでみる「ギャラモン」ではちょっと違うんです。

▼アルファベットの書体大辞典「書体モンセン・スタンダード欧文書体清刷」 type_8

−−おんなじギャラモンなのに?なぜですか?

極端にいうと初版と重版でも、版がずれたりしてちょっと違うんです。モンセンは印刷された状態が元になっているので、パッと見は一緒なんですけど、よーく見てみると、細かいディティールがちょっとずつ違っていて。モンセンってそのニュアンスがすごくきれいなんです。なので、基本はそれをスキャンして、アウトラインをパスとってデータ化して使っているんです。 type_9

−−えっ!カレンダーに使っている書体って全部作ってるんですか?!

そうなんです。まず最初にモンセンをスキャンして、1から31まで数字を作るところから始めてます。

−−パソコンで打ってるんだと思ってました。いやぁ、そんだけ手間かけてこのお値段?お安いじゃないですか!

あはは(笑)そうですね。結構手間はかかってるんです。他のデザイナーがやってて手伝ってた頃は、これは大変だなぁと思ってました。

−−血と汗と涙がつまったカレンダーですね。驚きでした。今まで知らなくてすみません(笑)

そうですね(笑)見ていて気持ちの良いデザインを心がけたので、使う方に少しでもそう感じていただけたら嬉しいです。

−−とても面白い話がきけました。ありがとうございました。

 

▼岩永和也が手がけたタイプフェイスカレンダーはこちらよりお買い求めいただけます。

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シンプルなグラフィックデザイン

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