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宮田識と対談 第5回 プロダクトの在り方

−−新しいフラワーベースの発売にちなんで、今日はD-BROSのプロダクトの在り方について、宮田さんが考えていることを聞かせてもらえればと思います。

「基本的には、商品として世の中にメーカーとして出していくってことは、表現の方法というのは非常に幅広いわけだけど、我々の仕事としてはある意味特徴をもたなければいけない。

例えば、洋服を作ることがあるかもしれないし、家具を作ることもあるかもしれないし、食器を作ってもいい。要するにD-BROSとしては別に何をつくろうって決めているわけじゃないから。非常に幅が広いわけだけど、その中で僕らが持っている力をどうやって出したら成立するのか、それが目的だよね。グラフフィックデザイナーがスタートさせたD-BROSというものが、グラフィックデザインとしての特徴を持ちながら商品化していくということだと思う。

例えばパッケージを作るときに、まずパッケージの形がありますよね。素材があって、それからその素材にかかる費用とか製造コストとかを考えて、プロダクトそのものの元となる形、デザインが必要になる。世の中の流れや様々な範囲を含めて、デザインの方向性が見えてきて形をつくりますよね。

その後に『こいつはなんだ』っていう表示をしなきゃいけない。表面デザインというのがありますよね。それがフィットした時に客は気持ちがいいと感じる。持っていて気持ちがいいというか、納得したものを買った気になる。それは、その商品の能力相応の見え方をするべきであって、過ぎることも良いと思えないし、すごく物が良いのに質の悪い見え方やデザインをしてもよくない。形も表面的なデザインもうまくリンクして、そのもの相応プラスちょっと魅力的ぐらいがちょうどいい。商品パッケージだったらそういうことが成立するだろうなぁと。

その時に、表面デザインに関わる特殊な印刷技術だとか、表面に立体的なものを付けていくだとか、そうなってくるとコストもかかるし量産化できないとなってしまう。そこには“量産化”というのが必ず付きまとってくる。一個一個手作りで生産していく会社じゃないわけだから。ある程度の量産をして、在庫を持って、お店に並べる、そういう考え方の元やっていることで、決して木を彫ったり、粘土をこねたり、そういうことをするわけではない。ガラスをふくわけではなく、型に流し込んで作るというそういうやり方だよね。そうしないとみんなに使ってもらえない。たくさんの人に使ってもらえて初めてやっている意義がでてくる。

そういう意味では、量産化は欠かせない構造のひとつになっているということだよね。デザインもそういうことを気にしてやらないといけないってことなんだけど。そこのところにジレンマがあって、案外やれそうでとても難しい。ちょっと頑張って個性的なものを作ろうとすると、コストがかかり、そこには機械生産がはまらず、時間もかかり、、、っていうことになりますよね。

そこら辺の頃合いを見ながらデザインをしていくという意味では、フラワーベースというのは非常にその関係がうまくハマっている商品であることは確かです。ハマったひとつには、低コストということ、工場での生産が非常にスムーズであるということ、プロダクトとしてPL法にひっかからない安全な商品であるということ。怪我をするとか、食べちゃってお腹をこわすとか、そういう心配がない。その上で、表面デザインが非常にしやすいという条件を持っている。透明だから向こう側のデザインも影響しながら考えられるとか、中に花の茎が入りこんで、それもデザインのひとつとして捉えられるし。平面デザインとしては都合のいい素材であり、都合のいいプロダクト、そういう仕組みのものだなと。非常にコスト面、量産化、デザインの仕方、見え方もいろんな意味でよくコントロールされた商品ですよね。」

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「これができちゃったが故というのが、D-BROSが今悩んでいることですよね。これがなかったらD-BROSはもっと伸びてますよ(笑)逆に超えることにみんなプレッシャーがかかって、仕事が進んでいない。要するに誰も追い越せない。もう随分長い間、作った本人たちも追い越してない。そこはすごくみんがモヤモヤしているところですよね。」

−−どうしたら生まれるんですかね?表面デザイン云々の前に元々のプロダクトのデザインだとか、量産化の生産性だったり、どう意識しながら作っていくということになるんでしょうか?

「例えばさ、これらを見てどれが一番めんどくさい?D-BROSじゃないなぁというのは?」
(部屋の中にあるスマートフォン、スプーン、眼鏡、ペン、ホワイトボートを指す)

−−スマートフォンですか?

「これ(スマートフォン)とこれ(ホワイトボード)は頭から考えもしないでしょ。これ(眼鏡)は?」

−−これ(眼鏡)はいけるんじゃないですか?

「いけるかな?100円だよ?」

−−いや、そういう意味では難しいですよね。

「コスト的にD-BROSでやるのは難しい。じゃあ、これ(スプーン)は?」

−−これは形のデザインならいけるけど、グラフィックを活かせるところが少ないですかね。

「そんなことない、ここ(持ち手)にグラフィック入れられるでしょ。要するに我々の頭の中で、頭からこれは僕らがやる仕事じゃないなぁというのがある。初めからナシというのがあるわけ。我々はグラフィックデザイナーだから。内装はできるけど、外装ができない。ましてや構造もできない。それと同じことがこういうデザインにも言えることなんだよね」

−−手を出せる領域と最初からやるべきでないものがありますよね。

「うん、営業する場所もないし、今までとは全然違う人たちに売らなきゃいけない。そういうことも含めて頭の中を整理していくと、何ができるの?というのはもう見えてくるじゃないですか」

−−見えてきますね。

「うん、もう世の中に“あるもの”になってしまう。あるものからは何も新しい形は見えてこない。ないものは相当面白くないと買ってくれないし。あるものでもそれなりに使う頻度が多くないと必要とされないし」

(自分の部屋から何かを持ってくる宮田)

「これは完璧ですよ。1回でも多く塗ってしまうと積み木ができない。ここ(箱)に入らなくなってしまう。最初から計算して塗られている、ものすごいテクニックだよ。こうやって置くとこの線と線がピタっとつながるんだよね。この凸凹しない技術はものすごいと思いますよ」IMG_0242▲宮田が海外で手に入れたネフ社の積み木「モデュロン」

−−すごい精度ですよね。

「木を全部同じ厚さに切って、角を取ることがまず難しい。塗装で何ミリって変わってきちゃうから、薄いペンキを何度も何度も塗っているんじゃないかな。もしくは蒸気で吹き付けて塗装しているのかもしれないけど。どうやっているのかわからない」

−−見れば見るほど美しいですね。

「職人技だよねって一言で言ってしまえばそれまでなんだけど。こんなにも綺麗に木を切れるもんなのかな、どうやっているのかわからないんだよ。相当、硬い木を使ってると思うんだよ。

これだけで美しい。何もしてないじゃないのって(笑)なんでこれだけでこんなに綺麗に見えるのか。これにはグラフィックも入ってるし、建築も入ってるし、これで十分だよね。こういう技術で何でもないものを変えていくというプロダクトの在り方もある。難しいこと考えなくても、これだけで並べて売ってもいいわけですよ。それぐらいの価値がある」

−−この精度で何気なく売られていたら欲しくなりますよね。

「ここら辺のことが頭の中で整理されていれば、何が可能性があって、何が可能性がないのか見えてくる。基本的には作れるものっていうのはあまりないわけですよ。その中から自分たちの力量の中で整理すればいいわけですよ。

例えば、こういうの(飾っている石)みたく、山に行けばいくらでも転がっているものを探してくる。これどうやって使うんだよって考えて、これを研磨する方法でやってみたら綺麗な何かができるかもしれない、ということを考えると、これはこれでひとつのやり方があるかもしれない。石を使って何かやってみようという、例えばここ(素材)から何かが生まれるってことはあるかもしれない。こういうことからD-BROSのものづくりが始まってもいいわけだよね」

(Interviewer:早崎暁生)

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[過去の対談]
第4回   KYOTO Design Lab での一年を振り返る
第3回(後半)。今回はゲストにKIGI(植原亮輔・渡邉良重)のお二人を迎えて
第3回(前半)。今回はゲストにKIGI(植原亮輔・渡邉良重)のお二人を迎えて
第2回「木と出会ってからどうでもいいと思った」
第1回「準備は勇気」

 

宮田識(みやたさとる)
1948年千葉県生まれ。株式会社ドラフト代表。クリエイティブディレクター。1966年日本デザインセンター入社。69年日本宣伝美術会奨励賞受賞。70年退社後、78年宮田識デザイン事務所設立。89年にドラフトに社名変更。 95年D-BROSをスタートさせプロダクトデザインの開発・販売を開始。朝日広告賞、ADC最高賞、日本宣伝賞山名賞。著書『デザインするな』(藤崎圭一郎 著/DNPアートコミュニケーションズ)
早崎暁生(はやざきあきお)
1972年岐阜県生まれ。株式会社ドラフト取締役。2014年2月よりD-BROSプロジェクト担当。

 

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About the Author

Eriko Fujitani

1982年新潟生まれ。文化服装学院ファッション情報科卒業。映画配給会社を経て2011年ドラフト入社。D-BROS事業部担当。