D-BROS MAGAZINEの新企画「先輩×後輩のデザイン対談」がはじまります。デザイナーとしての仕事の進め方やアイデアの考え方、またデザイナーだからこその悩みなど、先輩と後輩の関係性から生まれるデザインにまつわる話をお届けしていきます。

第一回目はドラフト独立後、株式会社10を立ち上げ、カードゲーム「Rocca」のアートディレクターとしても活躍する柿木原政広氏と、D-BROSの人気プロダクト「KUDAMEMO」を手がけた天宅正の対談です。ドラフトでは2年しか一緒に働いていない二人。ドラフト入社当時、天宅が疲労により倒れた時の話で盛り上がり、和やかなムードの中対談が始まりました。

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天宅 僕、柿さんとあんまりかぶってなかったと思うんですけど。

柿木原 でも天宅が倒れたのは覚えてるよ。(笑)

天宅 あはははは。そのこと久しぶりに思い出しました。

柿木原 新人の頃からほんとずーっと、土日も休まず仕事してたよね。こいついつ休んでるんだろうなって思ってた。

天宅 そうですね。倒れた次の日に一日休みもらって、あ、休めたって思いましたね。

柿木原 あはははは。

天宅 柿さんとは挨拶はするけど、そんなに仕事では関わりがなかったですよね。でも、柿さんチームは団結力があったというか、みんな楽しそうだなと思っていました。大きな広告の仕事をやっていたのは知っていたけど、「トニー滝谷」とか映画の仕事もやっていて、柿さんってこういうこともやっているんだ、でもいつやっているんだろうと不思議に思っていました。

柿木原 あれをやり続けるのが大変でさ、宮田さんからはそんなことやってる場合じゃないんじゃないの〜?とか言われたりして(笑)映画の「めがね」も「日本美術が笑う」も宮田さんに許可をもらうのが大変な仕事だったんだよね。

kakinokihara_1▲柿木原氏が手がけた映画「めがね」、森美術館の「日本美術が笑う」(2007年)ではADC賞を受賞。

天宅 そうそう、美術館のポスターとかもたくさんやっていますよね。どうやって意識や時間を分けているのかって、その時はわからなかったんですけど、そういう細かい作りものの方も楽しそうにやっているなぁという印象でした。でも、かたやイオンのような大きな仕事も上手くチームをまとめてやってらっしゃるなぁと思ってました。

柿木原 その時から思っていたのは、それだけだと食っていけないなぁということ。多分その両方をバランスよくやらないと、仕事は成立しないだろうなと思ってた。だからイオンみたいなある意味お金を回すっていう仕事と、あとは美術館のポスターみたいな細かい作り物と。こっちはこっちで表現していかないと、JAGDA新人賞とかデザインの賞は獲りづらくなるし、そのバランスはせっかくドラフトにいるんだから活用しないと、とは思ってた。

天宅 そういうのって、常に意識して行動されているんですか?

柿木原 計算してやったことはないけど、でも普通に考えたらそうだよね。お金が動いている額をみると、広告の仕事とそうじゃない仕事だと桁が一個か二個くらい違う。それを考えると、会社回すとなったらこれくらいやらないといけないだろうなぁとか、これだったら自分たちの給料で足りないよなぁとか。

天宅 たしかに。まわらなくなってしまいますよね。

柿木原 そうそう、結構その認識がない人はドラフトに多いかもしれないね(笑)

天宅 僕も最近ようやくその感覚になれたような気がします。宮田さんと一緒にやるような大きい仕事だろうが、小さい仕事だろうが興味があるし、デザインすることが楽しい。でも、ややお金のこととなると潤沢に予算があるところもそんなにないし、広告の仕事の方がお金が入ってくるからやっておかないといけないなぁと思ったり。

柿木原 そこを棲み分けしたつもりはまったくないんだけど、そっちはそっちで面白い人達が結構いるじゃない。例えばマーケの人たちってグラフィックの方では会えないけど、マーケの人たちが考えてることって結構面白くて、アイデアとか聞いてると面白いんだよね。こういう面白い人達と仕事するには、そういう関わり方をしていかないといけないし。マーケが言っている発想やアイデアを今の時代に捉えてみるとこういうやり方があるかな、ということを見つけていくような作業でもあるから、それはそれで面白いし、ちまちまやるのも面白いし。その両方かな。

こっち(Roccaのような仕事)は本当に無意識で、自分中でそんなに意識しなくてもできる。自然と好きなものをやっていくうちに出来ちゃったみたいな感じ。こっち(広告)は自分の好きなものだけじゃだめだよね。社会の流れを捉えないと、たとえやりたいことがあったとしても表現できなかったりするから。そこの比重がちょっと違うだけで、これ(広告の仕事)もこれ(細かい作り物の仕事)も基本大きい傘だったりするから。

天宅 うーん、そうですね。

柿木原 こっち(Roccaのような仕事)のコアなところが、まったく反対のここ(広告の仕事)につながっていたりするわけ。全然違うことなんだけどね。

天宅 はい、なんとなくわかります。でも、こういうの(Rocca)を見つけられるのがうらやましいなぁと。

柿木原 まず言えるのは多分デザインにそこまで自信があるわけではないからというのがあるかも。もし自分が植(植原亮輔氏/キギ)ほどデザインの落とし込みが上手かったらそれでやっちゃうもん。

天宅 うん、そうですよね。

柿木原 それよりもこの時点で何をやると面白いか。例えば、教育機関で証書というものにデザインを入れるとその時点で新しいかもという着眼点の新しさと、グラフィッックの落とし込みだと、着眼点の新しさの方が自分としてはしっくりきたりするから、幼稚園の卒業証書を作ったり。JAGDAの賞状も日本の賞状で変にモダンでヨーロッパ風なのはよくあるけど、モダンで日本っぽい要素が入っているのがいいなぁと思って、ああいう風にデザインしてみたり。

kakinokihara_2▲柿木原氏がデザインした日本グラフィックデザイナー協会のJAGDA賞とJAGDA新人賞の賞状(2008年)、富士中央幼稚園の卒業証書(2002年)

柿木原 自分がその業界でやっていない何かを見つけることが、自分としてはデザインと同じくらい、デザイン=それに近いところもあったりして。今までやったことのないところにどうやって踏み込むかっていうひとつにカードゲーム(Rocca)があったり。カードゲームって、日本ではUNOかトランプしかないし、みんなやってないよね、というところがあった。

kakiokihara_3▲柿木原氏がゲームデザイナーのトゥルーリ・オカモチェク氏とつくったカードゲーム「Rocca

天宅 デザインってすぐアウトプットとか表面デザインって思われがちじゃないですか。でも仕組みを考えたり構造を変えるのも、デザインだと思ってるんです。アウトプットは上手な人が世の中に本当にいっぱいいて。

柿木原 そうだね。(笑)

天宅 でもそこの着眼点というか、ものの見方を変えることで、アウトプットや表面だけの話だけではなくなる。仕組みが変わるだけで、それ自体が面白くなるというか。ちょっと上手く表現できないんですけど。

kudamemo▲天宅がデザインしたD-BROSの「KUDAMEMO」(メモブロック)。本の製本の仕組みを活かしている。

柿木原 いや、でもそういうのはある。新しい仕組みってまだ他の人がやっていないから、表現をど真ん中で直球勝負ができるわけ。

天宅 はいはい、そうですよね、素でいいというか、そのまんまでいいというか。

柿木原 でもそれを何回かやられるともう他の人がやっているからになっちゃう。例えばテーブルプロジェクションっていう、人はいないけどゲームをずっとやってるっていうのが面白いなぁと思って作った映像作品があるんだけど。座ってるとなんとなく自分がゲームをしているような気分になるの。

Exif_JPEG_PICTURE▲2013年府中市美術館で行った展覧会「OVER THE RAINBOW」で展示したRoccaのテーブルプロジェクション。誰もいないテーブルにRoccaで遊ぶ手元の映像が映し出される。

天宅 参加している感じですね。

柿木原 これって今流行のプロジェクションマッピングではないのよ。超アナログ。上から映すだけなの。

天宅 あはははは、まぁ確かに。

柿木原 でもこれはその時あんまりやられてなかったから、ど真ん中でいいっていうか、直球でいいし。これをやってる時に魯山人展っていう企画を考えていて、ギメ美術館でやるなら銀座の久兵衛を上から撮って、そのカウンターを再現するっていう作品も作ったの。

img04▲2013年フランスの国立ギメ美術館で行われた展覧会「魯山人の美」。銀座久兵衛のカウンターを再現した映像作品を出展。

柿木原 2015年のミラノ万博でも似たようなのがでてるんだけど、それはインタラクティブなわけ。でも俺がやりたいのは別にインタラクティブで、面白くて楽しく体験させるみたいなことがしたいわけではなくて。板前さんの握る動きがきれいで、尚かつ、そこでちょっと発言するコミュニケーションが粋なわけ。俺はそれを表現したいと思ったからこれをやったんだけど。でもそれって、ある意味ど真ん中じゃない。板前さんの無駄のない動きとか、例えば三人並んでるんだけど、真ん中が女性で、女性に向けてはガリをわざと半分に切って小さくなってたりだとか、寿司の置く向きが取りやすくなってたりとか。

天宅 なるほどね。

柿木原 それはコンテンツとして何が価値なのかって考えた時に、その板前の手の動きとコミニュケーションの技術がその場で見れることが重要だったから、その方法はテーブルプロジェクションという、プロジェクションマッピング的な方法なんだけど、インタラクティブ的なことではなく超アナログな方法で、一方的にその価値を伝えることで勝負ができる。

天宅 これを見て真似する人は逆にインタラクティブなことを取り入れないと新しくないからそうするんですよね。

柿木原 そうそう。やっぱりその時にその方が面白いかもしれないと思うからやっているんだよね。

柿木原 ある意味、すごい俯瞰した目でみるとさ、一年に1個、2個いい仕事があれば成立するじゃない。その1個、2個いい仕事っていうものをどれだけ意識して作るかというのも結構重要な気がしていて。その1個、2個で世の中にどう大きく影響させるとか、そういう視点を持つことが結構重要な気がする。

例えばイオンの仕事の始めの頃なんかはとんでもないパワーだった気がする。メリハリがあって、せいのっ!みたいな感じてやってた感覚があって。せいのっ!てできる状態が普段にあるかどうか。

天宅 なるほど。ぐーって力をためないといけないですよね。

柿木原 そうそうそう。だからずっと頑張ってると、頑張りが気がつかないうちにちょっとずつになってるんだよね。そうではなくて、どうやってもっと楽するか、どうやって息抜くか、どうやって楽しむかとか間をつくることも重要なんだよね。それと、息抜きっていうとマイナスだけど、楽しむになると楽しんでいることが息抜きになるから、その楽しむ要素をどうやって作れるかっていうことかもしれないね。例えばRoccaで一昨年フェスをやったのね。

天宅 フェス?でもRoccaがメインになってるんですか?

柿木原 そう、Rocca Rock Fesっていう音楽フェス。それはいろんなミュージシャンの人達と関わってやったんだけど。Roccaと全然関係ないのよ。

天宅 あははは。名前はついてるのに?

柿木原 でも、楽しかった(笑)

天宅 あははは。

柿木原 でも楽しくてそこで関わった人達とまた仕事できたりするし。今ルミネの仕事でロゴとか色々作ってるんだけど、映像を作った時にそのRocca Rock Fesで関わった「アナログフィッシュ」っていうバンドの下岡くんに音楽を作ってもらう仕事をお願いしたりとか。

天宅 へぇーすごい。

柿木原 そういうことがないとそこまで踏み込むことがないし、音楽もほんとは別の人に頼もうと思ってたんだけど、たまたま打ち上げで下岡くんに会って、実はこういう仕事があるんだけどどうかなって言ったら、「いいよ、やるやる」と言ってくれて。日々の生活の中にそういう関係やつながりを広げる何かがあるって所の方が結構重要だったりとかするよね。

天宅 広がりますね。柿さん、フットワーク軽いですよね。

柿木原 でもそんなにしょっちゅう出ているわけじゃないよ。

天宅 でも判断が早いというか、いろんなつながりがすごい広がっていますよね。

柿木原 重要視しているのは腑に落ちるということ。やってもいいかもとか、この人にお願いしてもいいかもとか、そういう風に判断していることが多いかもしれない。腑に落ちるということは何か理由があって腑に落ちてるわけだから、その理由を説明すればいいだけ。それが世の中的に面白いとか、お金になるからとかじゃなく、これをやるんだったらこの人ハマるかもしれないとか。

天宅 それは感覚的ですか?

柿木原 そこは感覚的だよね。昔からそういうところはある。

天宅 そうなんですね。もっとこういう話をお酒でも飲みながらしたいです。

柿木原 そうだね、飲みに行きましょう。

天宅 ぜひよろしくお願いします!

kakinokihara_5▲アンティーク風なインテリアがかわいい柿木原氏の事務所「10」でお話を伺いました。
IMG_9180▲事務所内でD-BROSのタイムペーパーを発見!

 

<デザイナープロフィール>

kaki

柿木原政広
KAKINOKIHARA masahiro
アートディレクター/グラフィックデザイナー

1970年広島県生まれ。ドラフトを経て2007年に株式会社10(テン)を設立。
JAGDA会員。東京ADC会員。
主な作品にsingingAEON、R.O.Uのブランディング、東京国際映画祭、静岡市美術館などを手がける。著作に福音館の絵本「ぽんちんぱん」。2003年日本グラフィックデザイナーズ協会新人賞受賞。2007年森美術館の「日本美術が笑う」でADC賞受賞。2011年「Rocca」でNewYorkADC 賞SILVER、ONESHOW merit賞、東京ADC賞受賞。「静岡市美術館」のCIでONESHOW PENCIL賞受賞。2012年「Rocca」でGOOD DESIGN賞受賞。

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▼柿木原氏 関連記事 バックナンバー
六角形の不思議なカードゲーム「Rocca」インタビュー(前編)
六角形の不思議なカードゲーム「Rocca」インタビュー(後編)

tentaku

天宅正
TENTAKU Masashi
アートディレクター/グラフィックデザイナー

1978年兵庫県生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業。東京藝術大学大学院デザイン科修了。2005年ドラフト入社。2016年2月よりフリー。JAGDA会員。D-BROSの人気商品「KUDAMEMO」など他商品開発も手がける。2011年日本グラフィックデザイナーズ協会新人賞受賞。2010年D-BROSの「KUDAMEMO」で東京ADC賞受賞2015年清里焼酎醸造所の「じゃがいも焼酎 北海道 清里」でONESHOW bronze賞受賞。

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「KUDAMEMO」誕生秘話(前編:アイデアのきっかけ編)
「KUDAMEMO」誕生秘話(後編:商品になるまで編)

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