D-BROSのアートディレクター植原亮輔(KIGI)の2016年版カレンダーは、今回で第5弾となる「ROLL12」(ロールトゥエルブ)です。ページをめくって、付属のクリップで留めるという立体的なカレンダーは、他にはない存在感を放ち、毎年好評をいただいています。2016年版はHelveticaという書体を用いて、シンプルさを追求した1冊に仕上がりました。今回どんな思いでこのカレンダーを制作したか訊いてきました。

 

「ちょっとまず出来上がったカレンダー見ていい?」(1ページ1ページ丁寧にカレンダーを見る)

「いいね〜。あまり『いいね〜』なんて言ってるの書いちゃだめだよ(笑)」

——いや、ホントいいですよね。

「何て言えばいいのかな。ROLL12は今回で第5弾になり、これまでいろいろデザインをしてきたんですけど、ちょっと違うことをしてみようかと思ったんです。で、違うことをしようと思った時に、カレンダーにおいて「やってみたい!」と思う方法やデザインは結構試してきていて。どうしようかと考えた時に、ものすごいベーシックな状態ってどんなものだろうと思ったんです」

——はい。

「もちろん、今までもデザイン的にかなり削ぎ落として、どうやったらこのカレンダーがよく見えるかっていうことはやってきたんだけど、さらに削ぎ落とした時にどうなるかということを考えた。その時に、今まではわりと変わった書体を使ってたんだけど、書体でさえベーシックにしてみようと思って、Helvetica(ヘルベチカ)という書体を選んだんです。今まで僕はHelveticaをきちんと使用したことがほぼないんだよね」

——そうなんですか。

「うん。Helveticaを主役にしてデザインしたことはほぼないな」

——ヘルベチカって王道の書体なんですよね。

「もう超王道。Helveticaっていう書体は隙がないんだよね。完成度が高くて。あとは、みんなが好きな書体だったりするし、過去の有名なアートディレクターの人たちでもHelveticaを愛している人たちはたくさんいるから、そのステージに一緒に乗るということはどうなんだろうと思って、少し僕は避けてたんです。だけど、一回使ってみたいなと思い、今回使ってみたというわけです」

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——カレンダーの制作段階で、何度もD-BROSチームでミーティングをしましたけど、植さんのデザインは一番早かったですよね。1回目のミーティングからほぼ完成系に近いというか。始めから「Helveticaを使いたい」っていうのは言ってましたし、宮田さんからも一発OKでしたね。

「宮田さんもHelvetica好きだしね(笑)。宮田さんの時代の人たちが好んで使っていた書体だから、通るだろうと思ったよ。『Helveticaを使いたい』って言ったら」

——あまりにもスムーズにデザインが決まったので驚いたのを覚えてます。

「この書体、本当にシンプルでしょ。で、最初からHelveticaにふさわしいデザインが出来たんだと思う。宮田さんにはそう映ったんだと思うな。……何て言えばいいのかな、俺の中でHelveticaって“モノ感”があるんだよね」

——モノ感?

「要するに文字なんだけど、存在感がすごくあって、キャラ性もあるというか」

——モノ感って面白いですね。

「例えば、見たこともないっていうものは一瞬にして受け入れられないから、映像に見えてくることがある。映像というか、現象というか。でも、Helveticaってすごくよく見たことがあるから、ものすごい存在感を持っていて、この文字に影があるんじゃないかくらいのモノ感があるんだよね。そう、だからそれだけでも強いから、やっぱり周りに余計なデザインがあると負けちゃうんだよね。『やる意味ないじゃん』ってなっちゃうと思う。だからできるだけ、削ぎ落として本当に必要な要素だけを入れていくっていう風に考えてみた。そういう感じでデザインをしてみました」

——その分印刷とか、そういうところで植さんのカラーを見せるっていう感じだったんですかね。

「そうだね。だから印刷のこだわりはマニアックで、遊びみたいなことをずっとこれまでもやってきてたから」

——素人の私が見たら、簡単にはわからないことがいっぱい詰まってます。

「うんうん(笑)。過去にやった例でいうと、オペークのホワイト引いて、その上に重ねてマットブラックを刷ると、いぶし銀の黒になるとか。アミ点をコントロールして刷ってみたりとか本当にいろいろやってきた。印刷に関してはその流れでいうと、自分の特徴が自然と出るだろうと思っていたのであまり心配はなく、Helvetica自体をどう強く、かっこよく、存在感を持った書体に見せるかに気をつけました。で、その結果すごくシンプルにすることができたんだよね。まあ、印刷はやっぱりすごくマニアックなんだけど」

——一番最後のページも豪華ですよね。再来年の2017年1月が載っているページ。

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「うん、このサービスページもいいよね」

——サービスページ(笑)。今回のROLLもすごくいい仕上がりですね。

「ありがとうございます」

 

 

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