宮田識とD-BROSのアートディレクターを務めるKIGIの二人・植原亮輔と渡邉良重の対談後半です。前半では、KIGIのお二人がドラフトに所属していた時の思い出話で盛り上がりました。後半は現在のKIGIの取り組みについて訊いてみました。
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宮田 これはドラフトを卒業したみんなに言えるかもしれないんだけど、今どうやって仕事を進めていいか迷ったりするんじゃない? それは悪い意味じゃなくてみんな真面目で相手(クライアント)ときちんと組もうとするからで。相手としっかり組めば組む程、グッとかたくなって、自分の表現の世界から遠ざかっていくような、そういうジレンマがあるんじゃないかと思う。

植原 うーん。

宮田 僕は前提として、「面白がりたい」っていう気持ちがある。だからもっといい加減で、でも気持ちは盛り上げるようにといつも考えてて。そうじゃないとデザインはできないとも思ってる。まあ、もちろん仕事はちゃんとするけど、わざといい加減な面も作ってるというか。みんなドラフトにいた時はそのフィールドが用意されてたけど、今はその環境づくりから全部一人でやらないといけなくて、才能はドラフトにいた頃より格段に伸びているのに、何か上手く回らないなあ〜と感じることがあるんじゃないかと思う。

植原 僕も一人で独立したらそうなってたかもしれないですね。一人だとあるデザインをして2、3日ぐらいはどうしても悶々としちゃう。だけど、良重さんがいるとその悶々がなくなる。球を投げるとスッと返ってくる。そのバウンドがちゃんとあるから判断が速くなるというか、ある時から判断を委ねちゃったりもしてます(笑)。

渡邉 それはお互いだよね。

植原 その分の悶々時間が僕らはあまりないんですよね。

宮田 僕も表現上での悶々は全然ないな。そういうのを感じたことがないな。

植原・渡邉 へえ〜!

宮田 そう思った時にはすでに走っているというか、体を動かせば何か見えてくる。桜を見たら何か見えてくるし、アップで見たらまた別のものが見えてくる。動けばいいんだよ。家の中に閉じこもった瞬間に何も見えてこない。

植原 確かに。歩いたらアイデアが出たりしますよね。

宮田 そうでしょ。目からの情報ってすごいから。ピントが合うところの情報がすべてわーっと入ってくるわけで、その残像を追いながら判断をしてるわけでしょ。目は脳に一番近いからそういう感覚を得ちゃえば悩んでる暇がない。そういう感覚が身に付いちゃえばね。

——なるほど。ちなみに、ドラフトを卒業されたOBの方々で集まったりとかってあるんですか?

宮田 ないね〜。一度くらいOB会やってもらいたいな〜!

渡邉 確かに! 卒業した人が全員集まったらどういうことになっちゃうんだろう。

——ぜひ開催したいですね。では、後半はKIGIの取り組みについてお話しを伺えたらと思ってます。今はグラフィックからプロダクトの方まで広く活躍されてますが。

渡邉 (植原に向かって)どうぞ(笑)!
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植原 えーっと、グラフィックもやれば、プロダクトもやれば、展覧会もやれば、いろいろなことをしてますね。あと最近ではメーカーみたいなことも始めたり。すごく活動範囲が広がっていますが、今は種蒔きかなと思ってるんです。世の中がどうなっていくかわからないから、種を蒔いて、出てきた芽を育てるっていうことをしてますね。ただ、どれも手を抜いているわけじゃなくて、すべて真剣にやっています。でもこれがすごく増えてきたらどうしようっていう不安はあるんだけど(笑)。

——まだいろんな領域を試して楽しんでるっていうことですね。

宮田 でもまだまだあと10倍くらいあるよ(笑)。

植原 あははは! そうですよね。

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——宮田さんから客観的にお二人を見るとどういうタイプのデザイナーなんですかね。

宮田 僕と同じような感覚を持ってるんだよね。一緒にやってきたんだから当たり前かもしれないけど、考え方が似ている気がする。何て言うか、「グラフィックデザイナーはこれしかやっちゃいけない」と思ってなくて、グラフィックデザイナーだけど別のところに絡んで、別の角度からグラフィック見てみたらどうなるんだろうっていうのを普通だと考えてる。

植原 うん。

宮田 それは僕もそうで、だから平気な顔して建築の方にも顔を出すし、いろんなところに顔を出す。グラフィックは2次元でシンプルな世界だから、ベースはそこにあって最後はすべてそこに戻るよね。裸と同じじゃない? 冬は服をいっぱい着てコートもマフラーもするけど、結局最後は裸じゃない。そのベースのところがグラフィックとかデザインだと思う。ヨーロッパを見てるとグラフィックが昔からずっと強い。逆にこれから伸びる国はコンピューターとか映像系が強い。
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植原 それもそうだと思うんですけど、僕は宮田さんのCD(クリエイティブ・ディレクター)としてのあり方に影響を受けてるところがあって。CDが考え方の中心を作って、そこから先の表現はどんなことでもできるよ、ということを教えてくれたんです。そういう意味でいうと、今世の中がCD化しているような気がするんです。

宮田 うん。

植原 プロダクトの業界も建築もインテリアも。

宮田 前は固まってたよね。建築は建築、インテリアはインテリアって線引きがあった。確かにそういうのが今はなくなってきてる。

植原 宮田さんはずっと前からやってきたことだと思うんですけど、作る場と、表現する場と、宣伝する場が全部重要だっていうことが、みんなわかってきてる気がするんです。そこの構造を把握してる人たちの活躍を目にすることが多い。それが全員グラフィックやってるかっていうとそうじゃなくて、メーカーの人だったり、建築家だったり。そういうみんながCDっぽい動きをしているような気がします。

宮田 思えば当たり前のことなんだけどね。案外今までやってなかったね。

——今お二人がやられてる「Mother Lake Products Project」(※1)の第一弾でKIKOFのこの器が出てるじゃないですか。第二弾、第三弾はすでに準備があるんですか?

植原 第二弾は木工の家具と。

渡邉 ちりめんを使ったサシェとか、麻を使ったランチョンマットとかエプロンとか、そういうものを徐々に、ですね。

——あと、表現の場所として新たに基地ができると伺ったんですが。

植原 実は白金にSHOPを作るんです。フリースペースがあってちょっとギャラリー的なこともできて。ちゃんとしたオープンは夏頃を目指しているんですが、とりあえずそれまで試運転を開始してます。

渡邉 そこにはもともとKIKOFを置きたいと思ってたんですが、キギが関わっているもの、もちろんD-BROSのものとか、時期によってはCAKUMAの服も置きたいです。それでフリースペースではちょっとした展覧会とかいろんなことができる場所にしたいなと思ってます。

植原 あとは僕らの表現の自由な場として、何か表現したいなと。そういうのが何か必要だなって思ったんですよね。そこは僕たちだけじゃなくて、3社合同で作った場所で、KIKOFの陶器を作ってくれている丸磁製陶と、ブルーストラクトというプロデュース会社3社です。とにかく場所や物件が気に入ったので、3社でとりあえずまず走り出そう!と(笑)。

——「いろいろやってみよう」の一つですね。

植原 そうですね。

渡邉 細々とでもいいので。

——KIKOFについて制作秘話があれば聞いてみたいです。

渡邉 秘話かはわからないですけど、面白いなと思ったのが、思いもしない偶然の発見っていうのがいくつもあったんです。今陶器とテーブルが形になってるんですが、その両方ともが、私たちはデザインとしてやりたかったことをしただけなのに、そのデザインと作り方がうまくフィットして。

植原 欠点をカバーできたりね。

渡邉 たまたま机はデザインとして厚みを持たせたかったんです。そうしたら、その職人さんが「ふつうの家具に使用する木だと重くて無理だけど、杉ならこの厚さがあればきるんじゃないか」って。その方は前から家具に杉を使ってみたかったのだけど、杉は弱いし家具にできなかったらしいんです。だけどこの厚さなら丈夫になるし、しかも、他の木よりも軽さが半分! だからちょうど向くんじゃないかというところから杉の木を使いましょう、となったんです。

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——すごい。

渡邉 杉の木って結構節がありますよね。綺麗な見え方にしようとすると使えない部分がいっぱいあるらしいんです。でも、周りをウレタン塗装することで、ハジかないといけない木がなくなった。

植原 それもデザインとしてやりたかったことで。
他にもまだあります。表面を少し削って琵琶湖の湖面を表す木目を強調したいと言ったら、浮造りにしてくれた。浮造っていうのは柔らかな部分を磨いてへこませ、木目の部分を浮き立つようにした仕上げ方法なんですけど 。特殊なブラシでこすっていくと、木材の目が浮き出てくる。

渡邉 そうすることによって、杉の表面は弱いんだけど、柔らかいところを押しながら削るからちょっと表面が堅くなる。それもちょうどよくて。椅子も浮造で削ることによって、座りやすくなる。でもそれはこの厚さがないとやっぱりできなかったことで、「へえ! そうだったんだ」って思うようなことがたくさんありました。とはいえまだまだ解決しなくてはならない課題がありますが。

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植原 デザインとして常に世の中にないもの、見たことのないものを目指していくと、ない理由がそこでわかる。「あっ、だからないんだ!」と。そこが面白いです。でも、熱意を伝えると職人さんたちが一生懸命考えてくれるので。

渡邉 この陶器にしても、磁器か反磁器だとこの角度が保てなくて寝ちゃうんですって。でもこれは陶器だから形を保つことができたらしいんです。

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植原 それは空気を含んで軽い土だったから。信楽の土の特徴らしいんですけど。

渡邉 デザイナーと作る人とが協力体制じゃないとやっぱりできないんですよね。職人さんたちのチャレンジ精神がないと同じものしかできないと思う。

植原 信楽の今井さん(丸磁製陶株式会社 代表取締役)は「伝統工芸は、同じことを作り続けていくことが伝統工芸ではなくて、壊しながら新しいものに挑戦していくことが伝統なんだ」って思っているから、新しいことに挑戦してくれて。

植原 今井さんは自分たちの会社だけじゃなくて、信楽全体を考えているから。自分たちが成功しても信楽がだめだったら、いずれ自分たちもだめになるんだって考えてる。

宮田 この伝統工芸とデザインの掛け合わせは新しいものを生み出すかもしれないね。それでみんながそれを本当に使いやすいと思った時に、100年続く新しい何かが生まれるかもしれない。

(Interviewer:早崎暁生)

※1「Mother Lake Products Project」は、立命館大学の佐藤典司先生により立ち上げられた、琵琶湖をはじめとする大自然に恵まれた滋賀県の風土と、長年培われてきた工芸の技術を活かし、現代のライフスタイルに合った伝統工芸品づくりを目指していこうというプロジェクト。

 

信楽焼の伝統を取り入れたKIKOFの器はこちらからご覧になれます。
http://db-shop.jp/products/list.php?category_id=29

 

[過去の対談]
第3回(前半)。今回はゲストにKIGI(植原亮輔・渡邉良重)のお二人を迎えて
第2回 木と出会ってからどうでもいいと思った
第1回 準備は勇気