今回は2年前にドラフトから独立したKIGIのお二人・植原亮輔、渡邉良重と宮田の対談です。桜がまだ満開だった4月1日、まず部屋に入るなり桜の記念撮影から始まりました。今年は今までで一番の咲き方だと渡邉が言うと、宮田も「じゃあ僕も撮っておこう」と、3人並んで何だかとてもいい光景でした。対談は昔の髪型の話から和やかにスタート。

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——まずは宮田さんとKIGIのお二人の関係を訊いてみたいと思っています。出会って何年目ですか?

渡邉 わたしは、27年。

植原 すごい! 人生の半分。

——植原さんは?

植原 俺は、24歳の時にドラフトに入って今42なので、18年。

宮田 同じようなもんだな(笑)。

——人生の半分ですね。すごいですね。宮田さんはその姿をずっと見てきたんですね。

渡邉 私が入った時は宮田さんは37歳!

植原 今の俺より若いんだ。すごい。

渡邉 でも、印象は今とあまり変わらない。

植原 髪型も?

渡邉 髪型はもっとこういう感じ。

植原 アフロみたいな?

渡邉 宮田さん今はサイドを刈ってるけど、その時は全部同じ長さで。

宮田 床屋さんが変わると、その人の切り方で変わるから大体10年毎くらいに髪型変わるなぁ。

渡邉 全部の髪がほぼ同じ長さで、それが外に向かってるから。

宮田 そう、全部垂直に(笑)。

植原 あははは。

渡邉 それで、ある時からジェルをつけ始めて。

宮田 ジェルというのは便利だよね〜。

植原 何か落ち着くんですか?

宮田 形がつくれるじゃない。

渡邉 前はそれも全然してなかったから、垂直にね。

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宮田 基本的には僕の髪に重力とかないの。相当伸びないと、下に垂れてくることはないから。

——何か宮田さんを表してますね。

植原 ねえ。性格をね。俺なんかくせ毛だからねじりながら出て来てるもん。性格もそうなのかって(笑)。くねくねしながら出てくる(笑)。

宮田・渡邉 あははは。

宮田 良重さんの髪型もずっとこう。ほとんど変わらない。

植原 良重さんも短くしたら宮田さんみたいなのかな。

渡邉 もっと短い時も長い時もあったけど、大体この髪型かな〜。

——その宮田さんの37歳の時の印象ってどうでしたか?

渡邉 私が入社した時はすでにラコステ、モスバーガー、日本鉱業、プロギアの仕事が始まっていたので、その企業の方に対しての感じは今の印象と変わらずでしたね。どちらかというと私がこういう人がアートディレクターというなら私はアートディレクターになれないって思ったんです。デザインの話を企業の方とはせずに、その企業の内部がどうしたら活性化するかとか、デザインの前にそういう打合せをずっとするんですよ。泊まりがけの合宿で一日中話をして、その後にゴルフをするっていうのが何年か続いたんですけど、その時もほぼデザインの話じゃないから、私は常に固まって、あとは眠さとの闘い。

宮田 ははははは!

渡邉 ほんとに、一言も口の挟みようがなくて。だからきゅっと固まってるしかないみたいな、そういう仕事の仕方だったので、私にはアートディレクターは無理だなと思ってました。だから宮田さんは企業との関係の作り方は37歳ですでに確立してました。

——その時から変わらないんですね。その若かりし頃の印象に残ってることはありますか?

渡邉 うーん、地道な作業が多かったので刺激的かどうかわからないけど、ラコステの場合は人を出さずにポロシャツだけで表すという広告だったので、ポロシャツの襟を綺麗に見せるためには芯を入れてふっくらさせたりとか、畳むのも左右均等にとか、とにかくポロシャツを綺麗に見せることをどれだけやったんでしょうかっていうのが印象に残ってますね。

宮田 そうそうそう。

——それは宮田さんの指示だったんですか。

渡邉 指示というか、宮田さんはラコステのポロシャツが大好きだったから、もはやポロシャツだけをちゃんと見せれば他は何もいらないっていう感じだったので。その中で私とその時にいた先輩の人といかにポロシャツだけで表現するかって。

——そこでふっくらさせるためには芯を入れるとか考えてたんですね。

渡邉 そう。今みたいに画像加工で直すとかそういうことではなかったので、写真がすべてだったという時代だったので。

——植さんは印象に残ってることは?

植原 俺が入った時にはD-BROSが立ち上がっていて、広告は麒麟、トヨタ、モスバーガー、プロギアとかそういう感じで。俺はもともとポスター作家になりたいと学生の頃からずっと思ってたんです。すごいアーティスティックなポスター作ってスターになるぞって!

渡邉 (笑)

植原 でも、ドラフトに入った瞬間にこれはないなと思って。要するに、その時の広告を見てみてもポスターでアートを作るっていうことはなかったんです。だからちょっとかっこいいポスターを作って打合せに参加しても、デザイナーとして参加してる俺自身が説明できないし、ADの人も説明できないっていう状況があって、これは通らないと思った。そこで広告の難しさをいきなり教えてもらったというか。だから、ポスターに夢はないなと思った。

——おお〜。

植原 自分の思い描いてたポスターね。自分の思い描いていたポスター作家の夢はなくなって、その頃にモスバーガーとD-BROSをやってて、救いの光がその2つにあったんです。モスバーガーはポスターも作るけど、小さいものもわーっといろいろ作ってて、その小さいものが俺にとってはすごく新しかった。やっぱり1枚の画がデザイナーの作る最高のかたちだと思ってたから。

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でもそうじゃなくて小さいものも光ってるっていうのを、モスバーガーで見て、D-BROSでもそういうのをやり始めていて、こっちなら俺もいけるかもってずっと社内を観察してました(笑)。モスバーガーの広告を作っているデザイナーの部屋に行ってはみんなの作業を見て、一番奥に良重さんがいるから覗いて、「何してるの?」ってちょっかいを出しに行って。それで自分の部屋に戻って作業するみたいな。印象に残ってるのはそんなようなことかな。

——宮田さんからお二人の印象は? 多分、親と同じくらい見て来たわけじゃないですか。しかも仕事っていうすごく密度の濃いところで。

宮田 良重さんはいやなものはいやだと声に出す。

渡邉 それは先輩から「なんだよ〜」って思われてたかも(笑)。

宮田・植原 あはははは!

渡邉 そんなわがまま言ってましたね(笑)。

宮田 そう。でもそれは自分のやりたいことがあったっていうことでしょ。でも、植は我慢するタイプ。こっち(渡邉)は我慢しない、こっち(植原)は我慢する。それでそのまま大人になったんだよね。その間にもちろんいろんなことを勉強して経験していってるけど、もとは変わってない。経験値が増えていくことで成長して、良重さんは今は我慢できるけど基本は変わらず、もとを通しているからいいよね。

渡邉 いえいえ。

宮田 植はそれと違って自分の意思を持ってて、案外我慢してる。口では言わずにそれをかたちで表現しようとする。だからある時に爆発する時もある。

渡邉 あははは。

宮田 それは当たり前で、我慢しない人はポンポン出してるから何でもないんだけど、植はとにかく抑えるから。「かたちで勝負すればいいだろう。俺はデザイナーなんだから」って。今は辞めてから経験を積んでるから、そこはものすごく楽になってると思うけど、上に誰かいるとダメなタイプ。良重さんはいてもいなくても大丈夫なタイプ。それは山口県と札幌の違いかもね。(渡邉は山口県出身、植原は北海道札幌)

渡邉・植原 ははははは!

渡邉 ざっくり(笑)。

植原 そっか、寒さに我慢して。

渡邉 私も山の方だから寒いんですよ(笑)。

——2年前にKIGIを立ち上げて宮田さんから見てお二人は変わりましたか?

宮田 それははっきり変わってるんじゃない。モーレツに変わってる。

渡邉 私は意外と変わってないけど、植さんは変わったね。

植原 うん。何かは変わったね。

渡邉 私も変わりましたかね?

宮田 うん。だってよくしゃべるもん。

渡邉 え!?

宮田 良重さんは慣れないとだめな人だから、慣れるとかたちとか言葉にするタイプで、慣れが増えていくとどんどん強くなるタイプ。

——植さんの変化は?

宮田 経営を始めた瞬間に、もろに変わったと思うよ。どういう話し方をすれば人に伝わるかということも勉強しただろうし、その前に社内の人間とどうやって関わっていくかも考えてるだろうし、今は同時進行で見たことない、やったことのないいろんなことをしてると思う。でもアートなことをしたいという気持ちは芯にずっとあるわけよ。

植原 反動をね、反動を上手く利用するようになったかも。ドラフトにいた時は楽しい仕事を中心にやらせてもらってたけど、今は食っていかなきゃいけないから結構大変な仕事もしてるんだけど、その反動でもっとアートなことをしたい、もっと冒険したいって思うようになりました。そこはちょっと変わったかなって気がするけど。だから何とか経営も成り立ってて、それはドラフトにいた頃の俺らを想像するとかなり奇跡に近いかもしれない(笑)。

宮田 この二人ってどんな仕事も手抜きが全然ないの。

渡邉 私より植さんの方がそうかもね。

宮田 なかなかこの二人みたいなタイプはいないよね。小さいこともちゃんと丁寧にできる感覚。今のうちの連中にも学んでほしいよ。

植原 たしかに、「デザインあまり上手くなくて」みたいに言ってたのがいたけど、俺は絶対一切そんなとこ見せたくなかった。

宮田 それが正しい。

植原 やっぱり勝負ですから。

宮田 もともとそういうのを持ってる人と、言いながら覚える人と、言ってもわからない人の3
タイプあるんだろうね。始めから小さなことを丁寧にできる人は、でかいものを作る時の集中力はすごい。本当に小さなDM1枚でもADCに出したいかっていうことだよね。そこにチャンスがあるんから。

植原 ドラフトにいた時は予算とかいろんな細かなことを考えなくていいステージを作ってもらってたから、デザインにすごく集中できて無茶なこともいっぱい提案できてたんです。それを今のデザイナーたちももっともっとやるべきなんですよ。自由なフィールドを作ってくれてるからどんどん、どんどんやればいいのに。俺がドラフトにいた時は宮田さんのそのフィールドにすごく甘えさせてもらってて、とことんやっちゃえ!と思ってやってました。宮田さんに通れば勝ちだって思ってたので(笑)。

(Interviewer:早崎暁生)

宮田識と対談 第1回「準備は勇気」

宮田識と対談 第2回「木と出会ってからどうでもいいと思った」

 

 

後半へつづく。

 
▼KIGI(植原亮輔・渡邉良重)と滋賀の職人たちによるプロダクトブランド「KIKOF」
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